東院長の勉強部屋
糖尿病合併症治療とその歴史
1921年にカナダのバンティングとベスト先生がインスリンの抽出に成功しました。
翌年1型糖尿病患者に世界で初めてインスリンが投与されました。
インスリンの発見により糖尿病性昏睡で亡くなる方は激減しました。
その結果糖尿病患者の寿命が延びたわけですが、これにより三大合併症が問題となって来ました。
三大合併症の発症及び進展の抑制については、私が熊本大学代謝内科に入局し間もなく当時の教授であった七里元亮先生により発表されたkumamo studyによりHbA1cを低下させることが重要であることが分かりました。
2013年に再度熊本で行われた糖尿病学会において、現在の血糖コントロールの指標が示されました(熊本宣言)。
三大合併症の抑制のためにはHbA1c7%未満が必要であるとされています。
それでは、動脈硬化についてはどうでしょうか。
動脈硬化については、境界型糖尿病から発症すると先程書きました。
お分かりと思いますが、動脈硬化性疾患は糖尿病早期から、血糖値だけでは無く血圧、脂質、食事運動などの生活介入更には必要があればアスピリンの内服が必要であることが分かりました(steno2 study)。
早期から介入を行なった方と、後から介入を行なった方ではその差が縮まらないというレガシー効果があることが最近の研究で分かっています。
近年、医療の進歩や発展により糖尿病患者さんが更に長生きをされるようになりました。それにより骨粗鬆症、認知症、癌など、別の問題への取り組みも必要となります。
この3つの疾患については明確な答えは出ていませんが、糖尿病患者さんが食事・運動療法を継続していただき、血糖値、血圧、脂質、体重を正常値に近づけ、定期的な健康診断を受けることが健康寿命を延ばすために一番の近道だと考えられます。