新型コロナ時代のデジタルトランスフォーメーションによるクリニック働き方改革



医療法人隆望会 ひがし成人・循環器内科クリニック 理事長・院長 東 隆行

当院の歴史

ひがし成人・循環器内科クリニックは、日本糖尿病学会専門医(以下、糖尿病専門医)・ 日本循環器学会専門医(以下、循環器専門医)である私が、2005年4月、熊本県玉名 市内のビルで開業しました。法人化したのは 2009 年4月で、2012 年1月には現在の場所に新築移転し、フィットネススタジオ、プール、クッキングスタジオなどを含む施設「H3 support」を併設した新クリニックをオープンしました。

クリニック名にある「成人」は、私が宮崎医科大学を卒業後、長年在籍した熊本大学医学部代謝内科の前身、体質医学研究所成人科が由来です。

熊本大学代謝内科に入局後は糖尿病診療に携わりつつ熊本大学第二生化学教室でマクロファージスカベンジャー受容体とAGEの研究を行い、東京大学先端医学研究所・児玉龍彦教授とも共同研究を行いました。

研究生活終了後は、糖尿病専門医・循環器専門医として実臨床の現場で様々な患者診療を行って来ましたが、勤務医では出来ない食事・運動指導などを重視した医院を開業しました。 開業当初から予防に軸足を置き、「生活習慣病の発症予防と合併症予防」をクリニックの理念に掲げています。

理念の実践を通した地域貢献も常に意識し患者さん貢献、スタッフ貢献、そして地域貢献を自分自身のテーマとして、日々の診療を行っています。

患者・家族のパートナーとしてともに歩んできた結果、当初は250人/月ほどだった外来患者数が、 2021年10月現在で2300人/月まで増加しました。

早期の適切な介入を可能にするべく、血糖値や HbA1c の測定、眼底検査、骨密度測定、心エコー検査、運動負荷心電図検査、ヘリカルCT検査など、糖尿病や循環器疾患の合併症にかかわるほぼすべての検査がクリニック内で完結できるように、各種検査機器・設備を完備しています。

当院スタッフ構成

医療スタッフは院長含めて医師3名(2名は非常勤、うち1名が糖尿病専門医)、看護師9名(非常勤含む)、管理栄養士2名、臨床検査技師5名で、うち7名が、熊本県が認定している熊本地域糖尿病療養指導士です。

ほかにも、患者の思いに寄り添い、スタッフと患者をつなぐ役割も担うメディカルコンシェルジュ1名、電子カルテの入力補助作業を行う陪席7名を含む事務スタッフを13名配置し、全員がチームとなって、すべての患者・家族を総合的にサポートしています。

2020年10月には人型ロボット「Pepper」が新しいスタッフとして仲間に加わり、インフルエンザ予防接種の案内など、これまで医師が行ってきた定型的な説明を担い始めています。

働き方改革とデジタルトランスフォーメーション(DX)

当院では令和元年度より働き方改革の一環として、クリニックスタッフの業務軽減のためデジタル技術の導入を積極的に行っています。

当初は予想しなかったのですがDXにより職員の業務軽減だけでなく、待ち時間の大幅な短縮と、新型コロナウイルス感染症拡大の対策にも繋がりました。

この結果、職員の働き方改革だけでなくコロナ禍の下で職員の大きな安心感・満足感も得られています。

厳密には、当院のDXは各種業務のデジタル化すなわち、デジタイゼーションの段階と考えています。

以下当院で行っているDX

①医院への入室管理を番号入力より静脈認証に変更し、入室者および職種ごとの入室管理が厳格に管理できるようになりました。また、入室に暗証番号を入力する事はなく、セキュリティも格段に上昇しています。

②Robotic Process Automation(RPA)を導入、検査所見、CPAP患者の使用データなど紙媒体のスキャンおよびコンピュータ内での振り分けを自動化し、事務業務の効率化を行いました。

③Web問診を導入し、初診患者さんの問診時間を短縮し待ち時間短縮と、感染疑い患者さんとの職員接触機会を低下させました。問診内容は、電子カルテへの貼り付けが可能で入力業務効率化にも役立っています。初診の、多くの若い患者さんが利用されています。

④自動チェックイン・会計装置を導入し、チェックイン・会計時間短縮および直接現金の受け渡しを無くし感染症対策としました。また、業務終了後の会計処理時間も圧倒的に短縮しています。

⑤過去の処方箋確認のための書類をRPAでデジタル化後、iPadで確認し業務を効率化し診察までの待ち時間短縮に繫がりました。

⑥特定健診の自動判定・結果報告システムの構築を独自で行い、医師及び事務職員の負担低減と業務効率化を行いました。

⑦血液検査の外注依頼書作成はこれまで手書きとしていましたが、電子カルテとの連携を行い電子媒体にて依頼できるようにしました。また、検体ラベルも発行できるようにしました。この結果臨床検査技師・看護師の負担軽減とオーダーミスの低減に繫がりました。

⑧レントゲン一般撮影装置をCRよりFlat panel detector(FDP)を使ったdigital radiographyに変更し、患者さんの撮影時間の短縮と被曝線量の低減に繋がりました。

⑨令和元年秋よりHeart Lineを導入し、訪問診療をする患者さんのバイタルサイン管理、緊急時の施設職員との面談、褥瘡・壊疽管理及び通院患者さんの栄養指導をオンラインで行っています。導入時には予測していませんでしたが、新型コロナ感染蔓延期には感染防止のためオンライン診療のツールとして利用しています。

⑩令和2年10月よりPepperを導入し、医院案内・疾患・検査内容およびインフルエンザワクチンの説明や業者さんへの面談対応及び外来アンケート調査を開始しました。インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチン接種時期には、事前の患者さんへの説明を行いました。その他、糖尿病・高血圧症・高脂血症、心房細動をはじめとした疾患、禁煙外来予定の患者さんへの説明や新人教育・職員教育を行なっています。

⑪令和2年8月13日より有明保健所管内での新型コロナウイルス・クラスター発生のためクリニック入り口での体温測定およびマスク着用の有無を、体温検知及び顔認識マスク自動検知カメラで行っています。

⑫令和2年9月よりCLINICSのオンライン診療を開始しました。これは、発熱を主訴に来院されたい方の感染症対策としても有効と考えています。また、新型コロナ感染拡大に伴い受診を躊躇される患者さんでの使用をお勧めしています。

⑬令和2年12月より熊本メディカルネットワークへ接続を開始しました。情報共有の同意を得られた患者さんのカルテ閲覧、診療情報提供書の提供をオンラインで行います。 これにより、事務作業の減少と基幹病院との素早い情報のやり取りが可能となりました。

⑭令和3年6月より、WEB問診システムの改修を行い10月より稼働しています。これにより、疾患別の詳細な問診が可能となり陪席業務、看護業務の軽減を図りました。新規の患者さんは来院時に既にカルテができている状態で、問診の時間も短縮され待ち時間の短縮につながっています。

⑮令和3年11月よりクラウド予約システムを導入しました。音声対応システム、ネット予約システム、LINEによる次回予約のお知らせ(リマインド)も導入予定で電話対応業務を軽減し、受付事務業務の軽減を図ります。

⑯令和3年4月より物品発注システムを導入し、消耗品発注をオンラインで行っています。

⑰今後マスク着用の患者さんの本人確認のため、顔認識のデータベース構築を行う予定です。これにより、将来的には顔パスでチェックインも可能と考えられます。

⑱現在、CT読影の一部をAI読影にて補完を検討中です。また、院長の業務軽減のため患者さんデータベースを構築中です。これにより、正確な患者情報の把握、治療方針の確定を行うことができます。


院長業務のDXが完成すると当院の働き方改革は大きく前進すると思います。


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