糖尿病治療において、基礎インスリンは血糖管理の根幹をなしますが、毎日の自己注射が治療継続の障壁となる症例も少なくありません。
特に高齢者では、巧緻動作障害、視力低下、認知機能低下などが重なり、自己注射の継続が困難になりやすい傾向があります。
このような背景のもと、週1回投与が可能な超長時間作用型基礎インスリンが臨床導入され、糖尿病治療の選択肢は大きく拡張しました。

週1回投与インスリン(一般名:インスリン イコデク)は、アルブミン結合性の増強および皮下組織での安定したデポ形成により、極めて緩徐な吸収と長い半減期(約1週間)を実現しています。
血中ではアルブミンと可逆的に結合し、遊離型インスリンが持続的に供給されることで、日内変動の少ない安定した基礎インスリン作用を発揮します。
その結果、週1回投与でありながら、1日1回投与の基礎インスリンと同等の空腹時血糖抑制効果が得られます。

一方で、本剤の薬理学的特性として、定常状態に到達するまでに3~4週間を要する点は重要です。
そのため、短期間での効果判定や頻回な用量調整は推奨されません。
また、過量投与時には作用が長期間持続するため、低血糖リスク管理が極めて重要となります。
実際の投与量は、従来の1日1回投与インスリンのおおよそ7倍量となりますが、投与間隔は7分の1である1週間毎となります。
1メモリが10単位で、空打ちは10単位となります。

当院では、週1回投与インスリンの適応を「毎日の自己注射管理が困難な患者さん」と位置づけています。
特に、高齢者でご家族あるいは訪問看護師による注射介助体制が確立している症例を中心に導入しています。
現時点で3名の高齢患者さんに使用していますが、いずれの方も導入前にはGLP-1受容体作動薬を使用されていました。
これらの症例では、GLP-1受容体作動薬による食欲抑制がフレイルを助長し、体重減少やADL低下を来していたほか、血糖コントロール不良により口渇、多飲、多尿といった高血糖症状が顕在化していました。

週1回投与インスリンへの切り替え後は、食欲抑制を伴わない確実な基礎インスリン補充により、高血糖症状の改善が認められています。
また、注射回数が大幅に減少したことで、患者さんおよび介助者双方の治療負担が軽減しています。
自己注射は患者さんご本人ではなく、ご家族あるいは訪問看護師が週1回実施しており、高齢者診療の現場において現実的かつ継続可能な治療モデルであると考えています。

総じて、週1回投与インスリンは、「強力な血糖降下作用」と「治療の簡便性」を両立した新たな基礎インスリン製剤です。
フレイルや自己管理能力の低下を伴う高齢糖尿病患者さんにおいて、特に有用な治療選択肢であると考えられます。
一方で、用量設定や低血糖リスク管理には、十分な経験と慎重なフォローが求められます。
今後も当院では、患者さんの背景を踏まえた適正使用を徹底し、高齢者に適した糖尿病治療の質の向上を進めてまいります。



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