マンジャロの登場とポジショニングについて
2型糖尿病治療の進歩の中で、GIP/GLP-1受容体作動薬という新たなクラスに属する「マンジャロ(Mounjaro®, チルゼパチド)」の登場は、非常に注目されています。
ADA(米国糖尿病学会)2025年版の治療ガイドラインにおいても、マンジャロは早期治療薬としての有用性が明確に位置づけられています。
特に、HbA1cが10%以上と高値を示し、従来の経口薬では十分な効果が得られない症例や、体重減少やインスリン回避を希望する患者に対して、早期導入が効果的とされています。
マンジャロは週1回投与の皮下注射製剤であり、GIPとGLP-1の二重受容体作動機構を持つ点が、従来のGLP-1単独薬と異なる特徴です。
SURPASS試験群では、HbA1cの平均低下量が-2.5~2.7%と報告されており、既存のGLP-1受容体作動薬や一部の基礎インスリンと比較しても、優れた血糖降下作用を示しています。
また、同試験では最大15mg投与群で10kgを超える体重減少が認められており、肥満を伴う2型糖尿病患者にとっては大きなメリットとなります。
肥満の改善はインスリン抵抗性の軽減や脂肪肝の改善、心血管リスクの低下など、多面的な効果が期待されます。
さらに、低血糖のリスクが非常に少ないため、高齢者や自動車運転を行う患者にとっても、安全性の高い選択肢となります。
週1回の投与という利便性もあり、服薬アドヒアランスの向上や医療資源の効率的な活用にもつながります。
現在、心血管イベントへの影響を評価する大規模試験(SURPASS-CVOT)も進行中であり、将来的には心血管疾患や慢性腎臓病に対する適応拡大も期待されます。
一方で、導入初期には嘔気や腹部不快感などの消化器症状がみられることがあり、週2.5mgから漸増していく用量調整が推奨されています。
導入にあたっては、肥満の有無、HbA1cの程度、心血管合併症の有無などを評価し、インスリン療法の前段階として計画的に導入することが重要です。
総じて、マンジャロの早期導入は、2型糖尿病の個別化治療を推進するうえで有用な選択肢であり、高い可能性を持つ薬剤です。
今後は日本人を対象とした実臨床データの蓄積が求められ、適切な症例選択と導入指針の整備が重要になると考えられます。

田辺三菱製薬のHPより作成