HbA1cの変化が教えてくれた早期癌発見〜血糖値の変化は体からのサインかもしれません〜
先日、当院の糖尿病外来に通院されている患者さんから、「早期胃がんを見つけていただき、本当にありがとうございました」と嬉しいお言葉をいただきました。
患者さんご自身も驚かれていましたが、血糖値の変化がきっかけでがんが早期に見つかったことに感謝してくださったのです。
糖尿病外来で血糖値やHbA1cをチェックしている中で、血糖コントロールが急に悪化した場合、実は糖尿病以外の重大な病気が隠れていることがあります。
この患者さんも、普段は安定していたHbA1cが短期間で急に上昇したことが、精密検査を行うきっかけとなりました。
その結果、胃がんが非常に早い段階で見つかり、内視鏡での治療が可能な状態でした。
このように、「血糖値の変化から、なぜがんがわかるのでしょうか?」という疑問を持たれる方も多いかもしれません。
実は、がんの中でも特に膵臓がんや胃がん、自己免疫性膵炎といった消化器の病気は、血糖値に影響を与えることがあるのです。
膵臓は血糖値を調節するインスリンというホルモンを作る臓器です。
膵臓に病気が起こるとインスリン分泌が急激に低下し、血糖値が急に悪化することがあります。
また、がんや慢性炎症に伴う体のストレス反応も、血糖を上昇させる原因になります。
当院では、糖尿病の治療を続けている方の中で、「生活習慣や薬の変更がないのに血糖値やHbA1cが急に悪化した場合」は、単なる治療不足と判断せず、その背後に他の病気がないかを慎重に考えるようにしています。
実際に、これまで当院でHbA1cの急激な悪化をきっかけに、早期胃がんを2例、早期膵がんを1例、進行膵がんを1例、自己免疫性膵炎を1例、続けて見つけることができました。
特に膵がんは早期発見が非常に難しい病気ですが、血糖値の変化が「隠れたサイン」として現れることがあるため、私たちはHbA1cの動きを非常に重要視しています。
糖尿病の治療では、HbA1cや血糖値は毎回の診察で必ずチェックする身近な指標ですが、実は血糖コントロールだけでなく、体が発している別のメッセージを読み取る手がかりにもなります。
糖尿病治療中の方が、「最近急に血糖が悪化した」「食生活は変わっていないのにコントロールが崩れた」と感じた場合は、ぜひ一度ご相談ください。
HbA1cの小さな変化の中に、大きな病気のサインが隠れているかもしれません。
当院では、血糖管理を通して、患者さんの命を守る早期発見にも積極的に取り組んでいます。
【膵臓がん 早期発見の流れ】
1.HbA1c・血糖値の急激な変化
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2.生活習慣・内服状況の確認
↓
3.他の要因がない場合は、膵臓疾患を疑う
↓
4.精密検査の実施(中核病院への紹介後の検査)
・膵臓超音波
・腹部造影CT
・腹部MRI(MRCP)
・膵液・腫瘍マーカー(CA19-9など)
↓
5.膵臓がんの早期発見
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6.早期治療へ(手術・補助療法)
※膵臓がん以外にも自己免疫性膵炎や膵管拡張、膵のう胞性病変が発見されることもあります
