院長の聴診器紹介
ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard, HP)の「ラパポート聴診器(Rappaport Stethoscope)」は、かつて医療現場で高い評価を得た高品質の多用途聴診器です。
院長が済生会熊本病院・循環器科研修医時代から33年間愛用している聴診器の1つです。
ゴム管が劣化しやすいので、頻繁に部品交換をしながら使用継続しています。以下にその特徴や背景をまとめます。
【ヒューレット・パッカード ラパポート聴診器の概要】
1. 背景・開発の経緯
・HPは医療機器部門を有していた時期(主に1970~1990年代)、生体計測技術や心エコーなど臨床診断機器の開発にも注力していました。特に心エコーの技術者はPhilipsに移籍し開発を継続し、当院でも現在使用しているEPIQ CVxシリーズへと優れた技術が継承されています。
・「ラパポート聴診器」は、その中でも医師や医学生向けに高性能な聴診器として開発された製品です。
・名称は聴診器の構造に工夫を加えたラパポート博士にちなんでいます(※名称上の関係で、複数のモデルに「ラパポートタイプ」と呼ばれる設計がありますが、HP製品のものは特に精密設計が特徴)。
2. 特徴
・多機能ダイアフラム構造:高音・低音の切り替えが可能で、心音や肺音など多様な診察に適応。
・金属製の重厚なチューブとチェストピースにより、高い音響伝導性を実現。
・交換可能なアダプターにより、小児~成人まで幅広く対応可能。
・精密な音響設計で、小さな雑音や異常音も拾いやすい。
・一部モデルでは電子聴診器への発展基礎ともなり、後のデジタル機器に影響を与えた。
3. 医療現場での評価
・多くの医師が「音の解像度が非常に高い」と評価。特に循環器系の診察において、微細な心雑音の検出に貢献。
・医学生や研修医にも愛用者が多く、一時は「最高峰のアナログ聴診器」としての地位を確立。
・院長は特に高周波数の音がLittmannと違いがあり、頚動脈狭窄など動脈狭窄病変の検出に有用と感じています。
4. 現在の状況
・HPの医療機器部門はその後、アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies)などに分離され、現在ではHPとしての医療機器製造は終了。
・ラパポート型の設計思想は現在も他社製品に受け継がれており、Littmann(リットマン)などにも類似した高性能モデルが存在しています。
補足
現在、HP製ラパポート聴診器は中古市場などで稀に見かける程度で、新品入手は困難ですが、その性能と設計は聴診器史に残る名器とされています。
