肥満症に対する外科治療の導入
海外においては以前より胃バイパス術を中心に肥満症治療としての手術がすでに普及しています。
日本においては1982年より開腹肥満手術が開始されました。
2002年より低侵襲な腹腔鏡下手術が開始されてからは徐々に増加してきました。
この手術は近年、体重減少効果のみならず糖尿病などの治療効果が高いとのエビデンスが示されつつあります。
特に日本人は欧米人に比べ低いBMIで糖尿病などの肥満症関連合併症を発症しやすいとされているため"Metabolic surgery"としての位置付けで普及し、
そして2014年に腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が保険収載されることとなり、福岡県や大分県内で手術を実施している医療機関へ紹介しています
(現時点で熊本県内での手術実施医療機関はありません)。
特に当院では、多くの患者さんをチームで診療されている九州医療センターに紹介しています。
九州医療センターHPより
■保険診療による肥満手術の適応(2020年改訂)
下記①または②に該当し、6ヶ月以上の内科的治療によっても十分な効果が得られない場合です。
①BMI 35kg/m2以上の場合:
糖尿病、高血圧、脂質異常症または睡眠時無呼吸症候群のうち1つ以上を合併している方。
②BMI 32.5-34.9kg/m2の場合:
HbA1c 8.4%以上の糖尿病、収縮期血圧160mmHg以上の高血圧、LDLコレステロール140mg/dL以上またはnon-HDLコレステロール170mg/dL以上の脂質異常症、無呼吸指数(AHI)30以上の睡眠時無呼吸症候群のうち1つ以上を合併している方。
■肥満手術による治療効果について
この手術は脂肪吸引などの美容外科手術とは全く別の領域の手術です。
科学的根拠に基づいて胃を 部分的に切除し体重減少と糖尿病・高血圧症・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群など併存疾患の治癒を目指します。
スリーブ状胃切除術による体重減少効果は、超過体重減少率として約50%(理想体重を超えた分の約半分の減量)といわれています。
それほど劇的に 痩せないと思われるかもしれませんが、糖尿病については約3分の2の患者が血糖降下薬なしでHbA1c6%以下になるといわれ、著明な改善が期待されます。
当院でも糖尿美容治療中で血糖降下薬が必要なくなる方が多数いらっしゃいます。
■肥満手術が適さない方について
肥満手術は、一般的にはBMIが35以上で慢性的な健康問題(例えば、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群、心臓疾患など)がある方に適しています。
しかし、肥満手術はすべての人に適しているわけではありません。次のような場合は、肥満手術が適さないかもしれません。
・過去に腹部外科手術歴がある方
・高度な糖代謝異常などの健康問題がある方
・抑うつや身体的なストレスなどの心理的な健康問題がある方
・肝臓や腎臓などの臓器の機能障害がある方
・高度の逆流性食道炎がある方
・妊娠や予定されている授乳などの理由で手術を避けたい方
これらの場合でも、肥満手術が適さないということは絶対的なことではありません。個々のケースに応じて、医師と相談することが重要です。
当院では2014年以降10人近い方が肥満手術を経験されています。
手術までの6ヶ月で食事・運動療法にて10%程度の減量を執刀医より要求されますので、当院でも栄養士のサポートを行っています。
以下に最近手術を受けられた5名の方の1年間の減量効果を示します(1年後は手術時より平均で23%の有意な減量効果が統計学的に認められます)。